当協会は、1980年10月に「財団法人」として発足し、2012年4月には「公益財団法人」として新たな歩みを始めました。本年10月には、創立45周年という節目を迎えることができました。これまでの道程は、諸先輩方のたゆまぬ尽力と、多くの関係各位の温かいご支援によって築かれてきたものであり、ここに深く敬意を表するとともに、心より感謝申し上げます。
協会設立の趣意書には、「放射線を的確に管理し、その安全性を確保することは原子力の開発利用を促進するうえで不可欠の前提である。そのためには、放射線の計測が常に正確に行われ、かつ第三者にも信頼されるものでなければならない」と記されています。この言葉は45年前に記されたものですが、東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した今日、その理念はなお一層の重みをもって響いています。放射線計測の信頼性は、原子力を利用する社会の安全・安心を支える根幹であり、時代を超えて不変であると考えます。
現在、当協会は、@放射線計測の信頼性確保に係る調査・試験研究及び技術開発、A放射線測定器の校正、基準照射、特性試験及び放射線・放射能の測定、B放射線計測に係る研修及び知識の普及、Cその他(法人の目的を達成するために必要な事業)、という四つの柱を軸に事業を展開しています。これらはいずれも「社会の安全・安心・信頼に資する」という一貫した理念に基づくものであり、45年にわたり確実にその役割を果たしてまいりました。
第7次エネルギー基本計画において、原子力は「依存度を低減」から「最大限活用」へと位置づけを変えました。しかし、短期的には既存原子力施設の再稼働や長期利用が中心です。一方、長期的には廃炉や廃棄物処理といった新たな課題が顕在化してまいります。また、医療、産業利用、先端科学分野における放射線利用は着実に広がりつつあります。これらの動きには、従来の延長線上に単純に答えを見出すことは難しいものですが、それは同時に、新しい使命と可能性が与えられていることをも意味しています。
今後、当協会は、バックエンドにおける放射能測定や、新規制基準を踏まえた防災研修などに新しい領域を切り開くとともに、医療分野などにおける放射線計測の高度化や信頼性確保にも積極的に取り組んでいく必要があると考えています。つまり、45年間の蓄積を基礎に、社会の変化にしなやかに対応し、公益財団法人としての新しい価値を創出していくチャレンジが必要であると考えております。
そのためには、役職員一人ひとりが「チャレンジ」の精神と研鑽を持ち続けることが欠かせませんし、組織の戦略的転換も必要です。45周年は、私たちの歴史を振り返る節目であると同時に、変化を恐れず、むしろそれを成長の糧とし、協会が公益財団法人としての新しい価値を創出していく段階であると考えております。
今後とも、皆様の変わらぬご指導、ご鞭撻、ご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。